作者:狐火マナ

片桐美々の過去話。

作成日:2020/03/03


私は、幸福でした。  周りよりも少しだけ恵まれた親子関係を持ち、友人も少ないわけではなく、特に貧乏だったわけでもなく、ただただ幸せだったのです。  私は、満足してました。  では、それが当たり前ではなくなったのは、いつだったのでしょう。  私は、永遠を望みました。  しかし、ある日両親が死にました。  私は、幸福ではなくなりました。  親戚の家をたらい回しにされ、友人からは距離を置かれ、財産は全て持って行かれました。  私は、女でいることに恐怖を感じました。  私を引き取った叔父さんは、女が嫌いでした。  私は、髪を切りました。  気に入って伸ばしていた髪を、バッサリと切られました。  私は、リボンを取りました。  気に入っていた可愛い服は、捨てられました。  私は、『僕』になりました。  叔父に愛されるよう努めました。  僕は、必死でした。  叔父に嫌われないよう努めました。  僕は、無力でした。  一人では生きていけませんでした。  僕は、えんじました。  『バカな一人の少年』をよそおいました。  僕は、かいほうされました。  叔父が、死にました。  僕は、よろこびました。  この日をどんなに待ったことか。  僕は、思いました。  今なら、女の子の『私』にもどれると。

あれ?  『私』って……だれだっけ?


登場キャラクター

片桐 美々

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